群青の月 〜『Azurite』take00〜





入口のドア
左手は壁


一番奥の扉は、多分洗面所
その右には壁があって
硝子扉の背の低い棚に、酒が並んでる


そこから右回りに目を追うと、ランプ


――― ギョッとしたのはそこからだ


良く見れば

それはカッパがライトを点けるために
腕を伸ばして潜ったベット

薄い、白のシーツ




オレンジ色の光の加減で
…腰まで伸びた、長い髪に見えた



今日、竹田さんがくれたノースリーブの
ワンピースのまま出て来たから





その状態で俯せ
白い腕を伸ばして、こちらを向き
素足にスニーカーを履いたままの脚が





慌てて、
入口近くに、電灯のスイッチを探す




――― ねえじゃん まじかよ



足元にぶつかったダンボールの上に
フィルムに入ったままの
白熊らしき、ぬいぐるみがあったから

そちらを見ないで、カッパに投げた





カッパは
『ゴフッ』と言って動かなくなったが
放って置いた




しゃがんで、リュックから煙草を探す


…するとソファーから腹話術が

最初はターミネーターのテーマ
そして効果音




「 ビリビリ、ビリビリ、しゅー…
カシャ、ピピピ、ぴ 」


―― 生まれて、何かターゲットを捕捉したらしい



「 こんにちはクマー
よいお天気ですね

こんにちは〜 」


吹き出した


「 挨拶してどうすんだよ 」


「なぜかターミネー熊は、
銭湯に現れてしまったので
疑われなかったのです。」


「 熊の時点であやしい 」


「 じゃあアラスカの川沿いにする 」


「 使命は何? 」


「 シャケとるの 」


「 それじゃ普通の熊だよ 」


「 違うんだよ
ここのは一味違うんだって 」


「 …その熊が言ってるのか」


「 ううん ボプ・サップ 」


「 ………どっから現れたんだよ 」


「 ちゃんと玄関だよ 」





しばらく、
カエルの様な姿で、俺は笑っていた







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