群青の月 〜『Azurite』take00〜
リハーサルは、無事終了
けれど
もうその時点から
対バンの空気は、恐ろしい程冷たくなった
『 あずる 』を見る目は
何か、敵を見る様な顔付きに変わっている
真木がいきなり
『本番で、
TeresaのSkyをやらないか』と言った
Teresaは、
アイルランド出身の女性ヴォーカルで
環境音楽の様な、たゆたう声で歌う
真木は急きょ、キーボードを買って来た
四曲目まではギターで、オリジナル
五曲目は、Dhiran Car
六曲目のSkyは
キーボードに変わると言う寸法だ
真木から
Skyの曲を借りて聞いたあずるは
『 おぼえたよ 』と言って笑う
本番になって
初めて客席で人が、波になって
前に出てくるのを見た
最後のSkyは
Teresaの歌が、雑誌でよく見る批評
" 森を渡る風のよう "なら
あずるの声は
" 世界の終わりに見える、明け方の空 "
―――― 俺自身も
人の歌声で、初めて泣いた