群青の月 〜『Azurite』take00〜
「 ――― おい! 」
突然の事に、俺はドアに手を伸ばし
奴を制止した
その制止した腕を、奴は持ち上げ
獣の様に身を低くして、ノブを回す
こちらはジーンズの腰を掴んで
前に転ばせた
―― しかし
その状態からの、素早い足蹴り
…何の格闘漫画だよと思う様な状態
その足を避けて、首を掴んで床に押し付ける
そして背中に腕を持って来て、決めた
―― 数分
…痛いだろうに、参ったと言わない
拳を強く握った左手に顔を俯せて
たまに小さく、唸り声を出している
「 …言う事聞けば、離してやるから 」
「 嫌だ!!!! 」
低く、唸る様に返された
胸倉を掴んで、体ごと仰向けにする
――泣いているかと思ったら、その逆
目で殺さんばかりに ――
爬虫類みたいな火の揺らぐそれは
躊躇せず俺を、睨み付けてきた
こんな目を何かに向けられるのは
生まれて初めてで
――― しかもこんなカッパ
口開けたら、牙あるんじゃないか?
「 …そこの公園に
おでん食いに行くだけだから安心しろ 」
その台詞を聞いて、
一気にキョトンとした表情になるが
空いた両手で、
跨いでしゃがんでいた俺の両膝を押し、
後ろに転ばせ、隙間から逃げた
俺も『もういいか…』と思い
床に手を突き、行かせようとしたが
奴はいきなり顔を真っ青にして
へたりこみ、倒れてしまった