群青の月 〜『Azurite』take00〜
俺は急いで、あずるのシャツの襟を掴む
ギターの並ぶ店外に出ると
雑踏の中、
あずるは周囲を見回している
さっきの彼の姿は
もう、視界から消えていて
暗くなり
ネオンの照らす道には
カラオケのティッシュを配る人間が
増え初めていた
「 おい〜 どうしたあ? 」
真木が、声をかけてくる
あずるは慌てて
「 ごめん!
おれの友達みかけたんだ 」と返した
「 おお
あ、ななな ボウズ
面白いの、見つけたぜ 」
「 なになに? 」
そう言われてまた店内へ
笑い声を出しながら
何やら盛り上がっている
…学校で髪を切られた事件と、
彼は何か、関係あるのだろうか
「 おいおい 」
「 ん? 」
池上の声に
腕を組んでトントンと
十段程の、階段を降る
右にはレジ
そこを通過して、店内1番奥の左側に
ベースコーナー
目立つ所に置いてあるのは
メジャーな国産メーカーで
値段も一万弱から、三万位
見回すと
俺が持っているのと同じ物があった
Guremoと言うメーカーの四本弦
海外モデルのレプリカ
すると奥から
目を輝かせてあずるが必死に俺を呼ぶ
床の隅の、小さな加湿器は
静かな音をたて、稼動していて
木は水分で伸縮するから
高級楽器の置いてある所
気を使う店には、必ずこれがある
見渡せば、
雑誌で有名ミュージシャンが
腰にさげている様な物ばかりだ
そして
あずるが指差す先には
GUREXの、黒いベースがあった
あずるが声をかけた店員は
笑って頷くと
俺に向かってベースを差し出し
首にかけるストラップを促した
俺が持っていた物の"オリジナル"
縁が黒く、内側にかけて
青いグラデーション
小さなアンプに、シールドを繋げてくれる
暫く待ってスイッチ
胸が鼓動する
「 思い切り弾いていいよ 」
そう言われて "Sky"を弾いた