雪だるま
――だいたい1時間後。

 私の手は赤くなっていた。

 たぶん、冷たいものをずっと触っていたからだと思う。

 心臓がなんだか苦しい。息も乱れてる。

 病気、悪くなっちゃったかな……。

 けど。

 私の目の前には雪だるまがある。

 私の顔と同じくらいのからだをした雪だるま。

 帽子も目も手もない雪だるま。

 結局、雪があんまりくっつかなかったし、バケツを帽子がわりにするにはこの雪だるまはちっちゃすぎる。

 けど、雪だるまは雪だるまだ。

 私はじっと雪だるまを見つめていた。

――よく見えなかった。

 なんだか視界がぼやけてきてる。

 頭がふらふらしてきてる。

 遠くでお医者さんが大声を出しているのが聞こえる。ちょっと遠すぎて何を言っているかわからない。

 誰かが私の肩を抱く。

 沢山の人がまわりにいるみたい。喋っている人の声が少し聞こえた。

「こんなに死の灰に触ってしまって……。早くあっちゃんに放射能防護服を! 早くしないと手遅れになる」

 私は雪だるましか見ていなかった。

 私は咳き込んだ。

 引っかかるような、壊れているかのような咳き込み方。



 雪だるまに目ができた。

 それは私の血だった。
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop