劇場版 乙女戦隊 月影
「きゃああああ!」

悲鳴を上げて、ぶっ飛ぶビューティー。

回転し着地したブラックは変身が解け、九鬼へと戻った。

(チッ)

勝手に変身が解けたことに、九鬼は心の中で舌打ちした。

しかし、その動揺を悟られる訳には、いかない。

九鬼は自分で眼鏡を外すと、倒れているビューティーを睨んだ。



「さすがだわ…御姉様…」

ふらつきながらも立ち上がったビューティーの姿は、大月学園の制服を着た学生に変わっていた。

「あたしを倒す者が…いると…す、すれば…御姉様しか…考えられなかった…」

その制服を、九鬼は見つめ、呟くように言った。

「美和子さん…」

桂美和子…。大月学園生徒会副会長。

「お、御姉様…いや、お兄様と呼んだ方がいいのかしら?」

美和子の瞳から涙が溢れ、

「いえ!違う!あたしにとっては、最高の御姉様!誰よりも…」

溢れる涙に、九鬼の姿が映る。

「誰よりも…素敵な…お、ね、え……うぐあ!」

美和子は最後まで、言葉を発することができなかった。


「み、美和子さん!」

美和子の胸に、どこからか飛んできた包丁が突き刺さっていたのだ。

「…大好き…」

崩れ落ちる美和子を、駆け寄り抱き締めた九鬼。

「美和子!しっかりして!」

しかし、包丁は心臓に正確に突き刺さっており、美和子はほぼ即死だった。


「敗者には、死を!それが闇の掟だ」

頭上から声がした。

「美和子さん」

九鬼はぎゅっと抱き締めると、頭上を睨んだ。

「どうして、殺した!加奈子!」


月を隠すように、体育館の屋根に立つ平城山加奈子。

元乙女ソルジャー。

「気安く呼ぶな!月の使者よ」

黒いマントを翻し、赤き瞳が、九鬼を見下ろしていた。

「それに、我が名はもう…加奈子ではない!」

加奈子の手には、闇より深いサングラスが握られていた。

「我が名は、闇の女神、災禍(サイカ)!」
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