劇場版 乙女戦隊 月影
「まったく…どうして、あたし達が、参加しなければいけないのよ」

三門の下で、腕を組み、ため息をついているのは、相原理香子だ。

「仕方ないじゃない。大月学園の先生が…何人も退任したからね」

理香子の隣にいるのは、橘楓は京都マップを見つめながら、

「あたし達の学校と、姉妹校だから…それに、大月学園の理事長は、あたしのおばあちゃんでもあるし…」

「そうなんだあ〜」

理香子は背伸びをしながら、あっさりと流しかけた言葉に、はっとした。


「え!」

理香子は、楓の顔を覗き込んだ。

「そんな話…あたし、聞いてないけど!」

驚く理香子に、楓は京都マップから目を離さずに、

「後付けだから…」

「後付け?」

「そうよ」

楓は、広げていた京都マップを畳むと、

「あたし達が、出ている小説…季節外れシリーズを、作者が書く暇がないから…理香子ラブの作者が、原作者権限を使って、この映画にねじ込んだのよ」

「え!」

理香子は、驚いてみせると、

「あ、あたしと中島のラブストーリーは、どうなるのよ!」

楓にすがり付いた。

「知るか!あたしも、この世界でやっていけるか…わからんのに」

「講義よ!講義!」

理香子が1人、わめいていると、

2人の目の前を、黒タイツの集団が通り過ぎていった。


理香子と楓は、その集団を目で見送った後…互いに顔を見合わせた。

「何?今の?何なのよ!」

軽いパニックになる理香子に、楓は京都マップを差し出した。

それは、京都マップを装った台本だった。

それを受け取った理香子は、そこに書かれた台本に目を通した。

「乙女戦隊…月影?」

理香子が眉を寄せていると、目の前を巨大な木綿豆腐が走っていく。

「ヒーローものよ」

楓は、理香子の肩に手を置くと、

「一応…パラレルワールドみたいな感じで頑張りましょう」

「ええーっ!」

嫌な顔をする理香子に、

「仕方がないでしょ!あたしらのは、シリーズ化しなかったんだから」

楓は、理香子の両肩に手を置くと、

「生き残る為に、世界に馴染むわよ」

握る手に力を込めた。
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