劇場版 乙女戦隊 月影
「あああ!結局、結城来なかったね」

旅館の月の間で一泊することになった九鬼、夏希…蒔絵と早奈英。

蘭花だけは、別の部屋に振り分けられていた。

九鬼は、早奈英以外の乙女ケースを月が見える窓際に置いた。

早奈英の正体を誰にも、教える気はなかった。

それは、早奈英が戦う為に乙女ガーディアンになった訳ではないからだ。

それに、乙女ガーディアンのケースは、ムーンエナジーを補充する必要はなかった。

月の女神を護る為に、存在するガーディアンには、特別に衛星が備えられていた。

月の見えなくても、その衛星が絶えず、月の光を集め、ガーディアンに送り続けているのだ。

九鬼は、黒い乙女ケースを見つめ…そっと表面を撫でた。

充電はできるようだが…。


「駄目だ!また携帯止まってる」

里奈に電話をかけていた夏希は、例のアナウンスを聞いて、ため息をつきながら、電話を切った。

「ちゃんと払えって、いうの!」

夏希は、テーブルの上に置かれている急須に、ポットからお湯を注ぎ、お茶を飲んだ。

「…」

蒔絵は畳に寝転んで、携帯をいじっていた。

早奈英は、座布団の上に座っていた。その目は、九鬼の背中を映していた。


「まだ…時間があるわね」

食堂に集合する時間まで、まだ30分くらいある。

夏希はお茶を飲み干すと、

「やっぱり、お茶より…なんか、炭酸系が飲みたい!」

夏希は、立ち上がった。

「買ってくる!」

部屋を出ていこうとする夏希に、九鬼は青の乙女ケースを差し出した。

「夏希!これを」

「いいよ」

夏希は断った。

「すぐ、そこだし」

自動販売機は、旅館を出て、曲がり角のそばにあった。

「で、でも、危ないわ」

「大丈夫!」

九鬼の心配を遮って、夏希は部屋を飛び出した。

早奈英は目で、夏希が出ていくのを見送った。

「あたしは、コーラ」

ぼそっと言った蒔絵に、

「あいよ!お金は後でね」

夏希はこたえながら、部屋のドアを閉めた。



< 46 / 106 >

この作品をシェア

pagetop