劇場版 乙女戦隊 月影
「永遠の闇をさ迷え!」

災禍の手から、黒い光球が放たれる瞬間、

九鬼はジャンプした。

「お願い!装着して!」

黒い光が、九鬼を包み…乙女ブラックへと変身した。

「ルナティクキック零式!」

飛びながら、空中で足を突きだすルナティクキック零式が、災禍の脇腹を蹴った。

「な!」

発射する体勢を崩された災禍は、自分の作り出した黒い光球の吸い込む力の渦に、巻き込まれた。

乙女ブラックは、地上に着地すると同時に、九鬼に戻った。

災禍を吸い込んだ光球は、すぐに消えた。

「九鬼!」

グリーンから、蒔絵に戻ると、九鬼に駆け寄った。

「か、加奈子は死んだのか?」

九鬼は立ち上がりながら、首を横に振った。

「多分…生きてるわ。今の技は、ブラックホールっていっても、疑似ブラックホール…。本当のブラックホールができたら、この星ごとなくなってしまう。多分…あの光球に、吸い込まれたものは、どこかに幽閉されるだけ」

九鬼は、災禍がいた空間を睨み、

「その場所を作ったのが、やつら…ならば、自分の技ではやられないわ」

九鬼は額に流れた汗を、手のひらで拭うと、

「でも…しばらくは、加奈子はここに現れないはず…」

少しほっとした九鬼。


しかし、息をつく暇もなかった。

突然、飛んできた鉄の鎖が、蒔絵に巻き付くと、二月堂の前から、飛ばされた。

「うわあ!」

「蒔絵!」

林の向こうに、飛んで消えていく蒔絵の方へ走ろうとした九鬼の足元に、鋭い鎌が突き刺さった。

「チッ」

九鬼は足を止め、鎌が飛んできた方を見た。

法華堂…別名三月堂の方から、鎖鎌を持った魔神が姿を現した。

「和が名は、魔神かまいたちごっこ!」

巨大ないたちごっこは、高笑いをし、

「ははは!変身できるグリーンより先に、貴様を切り刻んでやるわ!」

鎖を振り回して、九鬼に向かってくる。

九鬼はその間に、アスファルトに突き刺さっている鎌を思い切り、足で踏みつけた。




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