劇場版 乙女戦隊 月影
早奈英は涙を拭うことなく、 九鬼を見つめ、

「生きることに、絶望していたあたしは…乙女ガーディアンの力で…あなたのおかげで、生きる力を取り戻しました」

早奈英は、銀色の乙女ケースに手を添えながら、

「この力で…あたしは…病室のベッドの上から…学園に戻ることができた…」

早奈英は乙女ケースを撫で…すぐにその手を止めた。

「だけど!その為に…あなたは!あたしに、この乙女ケースを渡した為に!大した力も出ない…訓練用の乙女ケースで、戦わなければならなくなった!」

「早奈英さん…」


早奈英は絶叫した。

「あたしが、学園の生徒で…あなたが、生徒会長というだけで!あなたは!あなたは……。だけど、あたしは!」

「…」

九鬼は、何も言えなくなった。

「ううう…」

早奈英は口を、乙女ケースに触れてない手で押さえると、嗚咽した。

涙は止めどなく…流れた。

「あたしだけ…守られていいわけがないわ。あたしだけが…」

早奈英は涙を拭った。表情を引き締め、

「今日、初めて…あたしは、戦いました。だけど…あなたのように戦えなかった」

早奈英は、九鬼に微笑みかけ、

「あたしは、戦士じゃない」

ぎゅっと乙女ケースを握り締めると、手を離し、

「この力を、お返しします」

ゆっくりと立ち上がった。

「その力を…みんなの為に…。あなたが、守れる…多くの人の為に…使って下さい…」

そう言うと、早奈英は崩れ落ち…気を失った。

今まで、ガーディアンの力で抑えていた痛みが、戻ってきたのだ。

「早奈英さん!」

九鬼は立ち上がり、地面に激突する前に、早奈英の体を受け止めた。

そして、その動けなくなった体を抱き締め、

「ごめんなさい…。あたしに、もっと…力があれば」

九鬼は早奈英を抱き締めながら、遠くにいるダイヤモンドを睨んだ。

「早奈英さん…。あなたから、受け取った力で…みんなを守る!」



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