劇場版 乙女戦隊 月影
「中島!待って!あたしも!」

中島に走り寄ろうとした理香子の前に、三人の女が飛んで来て、道を塞いだ。

「この人達は!?」

前に立ち塞がる三人を、理香子は知っていた。


「久し振りね。理香子さん」

そして、三人の後ろから、現れた人物に、理香子は仰天した。

「お姉さん?」

中島の姉であり、演劇部の部長である紅美子がいるなんて、予想外であった。

道を塞ぐ三人も、演劇部の部員である。

「話は、考えてくれたかしら?」

微笑みながら、きいてくる紅美子の質問に、理香子は眉を寄せた。

「え?」

「一応考えましたけど…」

理香子の後ろから、楓が前に出た。

「あなたなら…あたし達の幹部になれるわ」

「そうですね…」

紅美子は、理香子ではなく…楓に話しかけていた。

「か、楓?」

理香子は、楓の手を掴もうとしたが、

楓はそれを拒んだ。


「か、楓?」

戸惑う理香子に、楓は体を向けると、微笑んだ。

「理香子…いえ…」

楓はゆっくりと首を横に振った後、理香子を見つめ、

「乙女プラチナ」


「お、乙女…プラチナ!?」

楓に言われて、理香子は自分の姿に気づいた。

先程は、中島がそばにいた為、どきどきして自分の体のことなんて、見る余裕がなかったのだ。

改めて見てみると、眩しい戦闘服を着ているし…眼鏡までかけていた。

視力がいいのに。


「さっき…あんたが、中島を助けようと飛び込んだ時…あんたを助けようと、どこからか、眼鏡が飛んできたわ」

「え!」

自分では、まったく気がつかなかった。


「乙女プラチナの適合者となり…我らを裏切りし、あなたに…弟をあげる訳にはいかないわ」

紅美子は腕を組み、理香子を軽く睨んだ。

「え?」

理香子には、意味がわからない。



「理香子…。あたしは…あんたと違って、居場所が少ないからさ」

楓は悲しく微笑むと、ぽかんとしている理香子に手を振り、

「じゃあね!理香子!」

あっさりと、紅美子のもとへ歩き出した。
< 94 / 106 >

この作品をシェア

pagetop