劇場版 乙女戦隊 月影
「楓!待てよ!」

追いかけようとした理香子は、いつのまにか周りを黒い影に、囲まれていることに気付き、足を止めた。

春日大社の近くにある鹿の角切り場や、林の影から…百人以上の学生服の男女が姿を見せた。

「あ、あたしの学校の制服?」

それは、広陵学園の生徒達だった。





「これは…?」

シルバーは、周りを見回した。

あたし達も囲まれていた。

「クッ」

ブラックは、顔をしかめた。


「心配しなくてもいい」

哲也は疲れている加奈子に肩を貸しながら、警戒する乙女ソルジャー達に、話しかけた。

「お兄ちゃん…」

あたしは、傷だらけになっている哲也の方を見た。

哲也は軽く微笑み、

「…彼らが束になっても、今の君達には、敵わない…」

「チッ!どけ!」

加奈子は、そんなことを言う哲也の肩を振りほどくと、 シルバーを睨んでから、背を向けて歩きだした。


「災禍様」

理香子から離れた紅美子が、加奈子に向けて頭を下げた。

演劇部の部員の2人が、加奈子に近づくと、肩を貸した。


「…」

哲也は無言で、乙女ソルジャー達に背を向けた。

加奈子が去っていくと、広陵学園の生徒達も、その後にぞろぞろとついて行った。




乙女ソルジャー達だけを残し…奈良公園に静寂が戻った。

野生の鹿がいる為に、外灯の少ない公園内は、すぐに真っ暗になる。


明かりといえば、真上に浮かぶ…月しかなかった。


< 95 / 106 >

この作品をシェア

pagetop