Happy garden.【短編】

「カスミのせいじゃないって言ったねん。これがカスミの生まれ育った味やろ。

俺は大阪育ちやから、どうしてもこっちの関東の味付けは濃く感じるねん」


その言葉がストンと胸に落ちた。


「そっか。関西って薄味なんですよね」


「せやな。俺はそれが普通やけど、こっちの人には関西で食べた飯が味せえへんかったって言われたことあるし、薄いんやろな」


寂しそうに語る誠司さんを見ていると、胸が痛んだ。


気づいてしまった。


彼はこのおせちを食べたいんじゃない。


本当に食べたいのは故郷の味。


実家のおせちなんだ。



故郷の味なら、どんな顔をして食べるんだろう。


トクンと小さく胸が鳴った。



「関西の味じゃないけど、それでも食べてもらえて嬉しいです。ありがとうございます」


「俺やなくて、彼氏が食べてくれてたら一番やったねんけどな」


眉間にしわを寄せて「重い」と言った健吾の顔を思い出して、わたしはうつむいた。

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