Happy garden.【短編】

「……それは仕方ないんです。21歳の男におせちは重いんですって。家庭的すぎて、結婚をせかしてるみたいに思われたのかも」


「彼氏、学生か?」


「はい」


「そうか。遊びたい盛りやしな。彼女がおせちなんて作ってら、逆にひくんかなぁ」


誠司さんはまた卵焼きを食べながら、首をかしげた。


「俺みたいに32歳にもなった男なら、逆にうれしいんやけどな。

一人暮らしが長いから、家庭的な料理も食べる機会少ないしな」


「そっか。じゃあ、今度は誠司さんみたいな彼氏を作ります」


顔をあげて、今度はきちんと笑った。


「なんやしんみりしたし、酒でも飲んでええか。おせちって言えばやっぱ酒やしな」


「うん、もちろん」


「おっしゃあ!」


誠司さんは嬉しそうに片膝を打つと、立ち上がってキッチンへ消えた。



すぐに戻ってきたその左手にはグラスが二つ、右手には一升瓶がしっかり握られてる。

< 21 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop