Happy garden.【短編】
「……それは仕方ないんです。21歳の男におせちは重いんですって。家庭的すぎて、結婚をせかしてるみたいに思われたのかも」
「彼氏、学生か?」
「はい」
「そうか。遊びたい盛りやしな。彼女がおせちなんて作ってら、逆にひくんかなぁ」
誠司さんはまた卵焼きを食べながら、首をかしげた。
「俺みたいに32歳にもなった男なら、逆にうれしいんやけどな。
一人暮らしが長いから、家庭的な料理も食べる機会少ないしな」
「そっか。じゃあ、今度は誠司さんみたいな彼氏を作ります」
顔をあげて、今度はきちんと笑った。
「なんやしんみりしたし、酒でも飲んでええか。おせちって言えばやっぱ酒やしな」
「うん、もちろん」
「おっしゃあ!」
誠司さんは嬉しそうに片膝を打つと、立ち上がってキッチンへ消えた。
すぐに戻ってきたその左手にはグラスが二つ、右手には一升瓶がしっかり握られてる。