Happy garden.【短編】
とはいえ、ゴクリとなんて飲めないから、ちびりちびりと舐めるように口に含んだ。
舌に広がる辛さに顔をしかめる。
もう一度舐めるけど、やっぱり同じ。
しばらくわたしの様子を見ていた誠司さんもお酒をあおった。
「すごっ……! お酒、好きなんですね」
「ああ、うまいやん。酒はなんでも好きなんやけど、今日は正月やからな、正月らしく日本酒や。
カスミの作ってくれたおせちは和食ばっかやから、やっぱ日本酒が一番うまいで」
「そんなもんですか」
誠司さんがあんまりおいしそうに飲むものだから、
勇気を出して、一口ゴクッと飲んでみると、あまりに濃いお酒の味にびっくりした。
喉が焼けるようだ。
ビールの苦みもまずいと思ったけど、日本酒はもっと嫌いかもしれない。
お酒の味をごまかすために、急いで甘い卵焼きを口に放り込んだ。
ひと噛みすると、すぐに嫌な味が和らぎ、ホッとした。
誠司さんと一緒においしく飲めないのは申し訳ないけど、こればかりは仕方ないよね。
わたしは小さく息をつくと、早くグラスを空にするために、息をとめて、残りを一気に飲んだ。