Happy garden.【短編】
鍛えられた大きな体だから精かんな印象だけど、よく見れば、切れ長というよりも丸っこい瞳で、童顔なのかもしれない。
「ああ、そういや、カスミの携帯が何度も鳴ってたで」
「え?」
すねるような仕草をしていた自分の顔が凍りついた。
「あ、ありがとう」
教えてもらったお礼を言って、かばんを探す。
おせちを食べたテーブルの側に見つけ、白の折りたたみ携帯を取り出し、それを見つめる。
着信履歴を見たくない。
そんな考えが浮かび、そう思ってしまう自分が不思議だった。
このタイミングで何度もとなると、十中八九、昨日別れた健吾からだろう。
もし、健吾のアパートを出てすぐに電話をくれていたなら、きっと今頃は仲直りして、元サヤにおさまっていたと思う。
一人になることが苦手なわたしは、一言でも謝ってもらえたら折れてしまう。
本当は健吾を好きじゃなかった。
そんな気持ちに気づいたって、一人でいることに比べたら、誰かといることを選んでしまうんだ。
でも、どうしてか、今はそんな気になれなかった。