Happy garden.【短編】
「……だからか」
「だからか?」
何が『だから』なのかわからなくて、オウム返しに問うた。
「いや、料理な。和食作れる女の子なんて、今どき珍しいやん。
俺の今までの彼女はせいぜいオムライス、焼き飯レベルや。おせちなんて、たとえ本を見ながらでも、よう作らんと思うわ」
「両親が事故で亡くなったのが高校2年のときで、それから一人で生活してきましたからね」
仲のよかった祖父母は先に他界していたし、他の親戚は遠方に住んでいてろくに会ったこともく、その家族の一員にはなれなかった。
ただ、奨学金とバイト代だけで学費と生活費をまかなうことは厳しかったので、卒業までのお金は出してもらった。
それだけでも、十分にありがたい。
高校を卒業後は今の会社に入社して、がむしゃらに働いて、生活してきた。
「やっぱり外食は高くつくので、食費を浮かすために、もう8年くらいはずっと自炊してますから。
そりゃあ、うまくもなりますよ」
「うん、いいんやないか」
そらしていた視線を誠司さんに合わせる。