Happy garden.【短編】
しかし、その前に、どこからかパチパチと拍手の音が聞こえてきた。
「え?」
一瞬、自分の耳が変になったかと思った。
(なんで、拍手?)
音の発生源を探そうと、あたりを見る。
拍手の音はすぐに止んだので、どこからかよくわからない。
前方にも左右にも誰もいなくて、益々混乱しかけたとき、声がした。
「えらい意気込やね。思わず、応援したくなるやん」
関西かどこかの独特のイントネーションをもつその声は低く、それでいてどこか甘い。
ずっと聞いていたくなる。
それが後ろからだと気づいて、振り返った。
そこにいたのは、長身の男性。
グレーのジャンパーに、黒のパンツ、黒の靴。
髪は短い黒。
ニッと笑いながら、近づいてくる。