Happy garden.【短編】
せっかくおかわりした椀にも手をつけていない。
そんな様子を見ていると、今さらながらに後悔が胸を占めた。
お弁当を食べてくれ、なんて厚かましいお願いだったかもしれない。
すでにおせちやお雑煮を食べてもらってるから気にしてなかったけど、
よく考えたら、会ったばかりの女が作ったお弁当を毎日のように食べるなんて、気持ち悪いよね。
自分のしたことで、恥ずかしくて堪らなかった。
「あの、やっぱり――」
やめましょう、と言おうとしたけど、言い切る前に誠司さんが口を開いた。
その返答は予想外なもので、彼はあぐらをくんだ両膝の上に手をおき、「お願いします」と頭を下げた。
思わず、わたしも頭を下げ返す。
「こ、こちらこそ」
誠司さんは頭を上げると、和やかにお雑煮を食べ出した。
しかし、わたしはそれどころじゃない。
出会ったばかりの男にとんでもないことを言ってしまったんだ。
考えれば考えるほど、自分への呆れと羞恥心でいっぱいだった。