Happy garden.【短編】
どうしてご飯を作ってあげたいなんて思ってしまったんだろう。
まさか、誠司さんに惚れた?
そんなわけない。
考えを振り切るように、お雑煮を一気にたいらげると、「ごちそうさま」と声をかけて、キッチンへ立った。
椀を洗い終わり、部屋に戻ると、入れ替わりに誠司さんが立つ。
それを横目で見ながら、昨日コートを羽織り、かばんをもった。
「誠司さん、ありがとうございました。もう帰りますね」
誠司さんに一声かけて、彼の後ろを通る。
すると、椀を洗っていた彼は水を止めて、わたしを見た。
「送っていくよ」
「いえ、近所ですから大丈夫です」
断ると、日中ということもあり、誠司さんはあっさり引き下がった。
靴を履こうとしたとき、不意に忘れ物に気づいた。
「あ、そうだ。余った材料は持って帰りますね」
冷蔵庫の前まで戻って、そこに置いていた買い物袋を持った。