Happy garden.【短編】
「ところでさぁ、それ、捨てるん?」
「そ、そうだけど」
見知らぬ男に話しかけられ、警戒心を抱きながらも、頷いた。
「この時期に四角い包み。しかも、さっきの叫び。てことは、それっておせちやろ」
わたしは言葉もなく、ただ首を縦に振った。
(『さっきの叫び』って、一体、どこから聞かれてたんだろう)
いけないことをしてる気分になり、お重をごみ箱の上から胸のなかに抱えなおした。
目の前に立つ男は、5センチのヒールを履いて170センチ近くあるはずのわたしより、さらに頭ひとつ高かった。
頬は少しこけていて、無駄な肉がついてるようには見えない。
それなのに、決してやせ細った印象を与えないその体は鍛えられてるんだろうか。
奥二重の瞳は、元カレに比べたら小さいけど、まっすぐに伸びた太い眉もあいまってか、淡泊ではない。
冬なのに浅黒い肌をしているし、精かんな男といった感じだ。
(脱いだらすごそう)
つい、変な方向へ思考がいってしまった。