Happy garden.【短編】
絡まり、ほどけるのは
誠司さんにお弁当を届けるようになってから、瞬く間に日は過ぎた。
上着が分厚いコートから薄手の春用コートに変わり、わたしはいつものように鼻歌を鳴らしながら駅からアパートまでの道を歩いていた。
今日もおいしかったと言ってくれるかな。
お弁当では、誠司さんの反応を頼りに関西風の味付けにチャレンジしていた。
最初は「懐かしい味がして嬉しかった」と言っていても、心から喜んでいるとは思えないようなあいまいな顔をして空の弁当箱を返していた誠司さんだけど、
今では緩んだ頬で「おいしかった」と言ってくれる。
公園の側にさしかかり、ふと足を止めた。
花壇には赤、黄、紫などの色とりどりの花が咲いている。
それらに心惹かれ、足は公園の土を踏みしめていた。
こんなふうに公園に立ち寄ることも日課となりつつあった。
ここは誠司さんと出会った特別な場所。
そう考えただけで、色褪せて見えていたはずの公園が輝いて見えるから不思議だ。
誠司さんに出会ったあのごみ箱の側のベンチ。