Happy garden.【短編】
「桜って咲いてもすぐに散ってしまうし、日中に都合つけて花見は難しいだろうから、夜に桜見ながらご飯はどうかしら? 夜なら空いてるでしょ? お弁当作るわよ」
「いいやん、それ」
誠司さんは口元を緩め、瞳をきらりと光らせた。
「でも、夜桜もいいねんけど昼の桜も見たいし、できるだけ土日空けておくから、休みの日に都合つけば昼から花見をしようや」
「ホント!? ありがとう」
一日、誠司さんと一緒にいられると思ったら、うれしくなった。
「それじゃ、桜が咲いてきたら教えるわね」
誠司さんは「ああ」とうなずくと、背中を見せてアパートの階段を下りていった。
*
それから一週間と少しの月曜日、久々に公園に寄った。
仕事が残業続きで、桜の様子を見に来る余裕がなかったのだ。
お弁当を作りながらニュースのチェックは行っているので、満開まではまだしばらくかかるはずだとわかってはいた。
公園の土を踏みしめる自分の足を見ていた視線を上げ、公園を見回そうとしたとき、わたしは驚いた。
「……嘘!」