Happy garden.【短編】

ヒュッと吸い込んだはずの息も喉の奥で止まる。



――なんて間の悪いタイミング。


ちょうど誠司さんの部屋から女性が出てくるところだった。


遠目からでもきれいな人だとわかる。


明るい茶色の巻き髪は、わたしのウエーブをあてただけでろくなセットのしていない髪の毛とは違い、美容院でセットしてきたばかりのようにきれいにくるくるしている。


黒の膝丈ワンピースの裾からは白くて細い足が伸びていて、その先は華奢なピンヒールで頼りなさげに守られている。


誠司さんはわたしに背を向ける形で立っていて、表情が見えない。


だけど、その女性の口元が笑っていることから、楽しく話をしていると簡単に想像がついた。


やがて、1分もしないうちに話は終わり、誠司さんはわたしに気づかないまま部屋へと戻った。


例の女性は帰るらしく、こちらへと向かってくる。


このまま立ちつくしていることも不自然なので、震える足に喝を入れて、ゆっくりと歩きだした。


心臓がドクンドクンと大きく脈打つ。

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