Happy garden.【短編】
『彼女を見ないように』
そう自分に言い聞かせても無駄だった。
すれ違う瞬間にしっかりと見てしまう。
そして、わたしは敗北を感じた。
間近で見る彼女は美人だった。
服装が、だけではなく容姿も。
大きな瞳に長いまつげ。
小さな鼻にふっくらとした赤い唇。
もちろん、今はつけまつげだってあるし、化粧で顔の印象の変わる女の人はたくさんいるから、素の彼女がどんな顔かはわからない。
だけど、わたしがどんなに頑張って化粧をしても、美人と言われるほどもきれいで華やかにはならない。
「作ってるだけ」なんて嫌味は言えない。
だいたい、服装の気遣いからしたって違うんだ。
わたしは自分を見下ろした。
黒のパンツに白のストライプシャツ、グレーのカーディガン。
会社の外に出ることのない内勤の事務とはいえ、制服がないため落ち着いたオフィスカジュアルを心がけている。