Happy garden.【短編】
その理由はあのときとは大きくかけ離れているけれど。
瞼が重くて、少し熱い。
頬には干からびた涙のあとを感じる。
枕もとの時計を見ると、まだ朝の5時。
明らかに、起きるには早すぎた。
それでも、のろのろとベッドから出ると、顔を洗って出かける用意をする。
「最悪」
鏡で自分の顔を見て、つぶやく。
まぶたが腫れていた。
いつも以上に不細工で、普段している薄化粧ではごまかせそうにない。
とはいえ、どんな化粧をすればいいのかもわからず、やったことといえばイエローのベースカバーで赤身を抑えたくらいだ。
あとはいつも通りにファンデーション、茶色とベージュのアイカラー、気安め程度に引いた鉛筆タイプのアイライン、マスカラで仕上げた。
それでもこんなに腫れた状態で出社は嫌だと、濡らしたタオルをレンジにかけて、かなり熱い蒸しタオルにした。
それを仕事用の鞄に突っ込んで持つと、黒のパンプスを履いて玄関のドアを開けた。
その瞬間、カタンと音が鳴る。