Happy garden.【短編】
なんだろう、とドアを見ると、外側の取っ手に空のお弁当箱を入れた紙袋がかかっていた。
胸が、目が熱くなって、また涙が出そうになった。
どんなにきれいな彼女がいても、わたしから言いだしたお弁当の関係は切れることがないのか。
わたしが作ることをやめない限りは。
目を覆うようにうつむいたとき、指の隙間からいつもの靴が見えた。
例の1センチのローヒール。
まずは、この靴を変えることから始めよう。
彼に見合う女になりたい。
玄関に舞い戻って紙袋を床に置くと、靴箱を開けた。
その奥に眠っていた7センチヒールの靴。
飾りは靴の正面とヒールの後ろにリボンがついてるだけ。
シンプルな靴でも、今のわたしにはすっごくきらきら輝いてみえる。
それを取り出して、履きかえた。
色はさっきまで履いていた靴と同じ黒だけど、高さが変われば心も変わる。
今度の休みはスカートを買おう。
そう胸に誓うと、まだ薄暗い外へと出た。