Happy garden.【短編】

なんだろう、とドアを見ると、外側の取っ手に空のお弁当箱を入れた紙袋がかかっていた。


胸が、目が熱くなって、また涙が出そうになった。


どんなにきれいな彼女がいても、わたしから言いだしたお弁当の関係は切れることがないのか。


わたしが作ることをやめない限りは。


目を覆うようにうつむいたとき、指の隙間からいつもの靴が見えた。


例の1センチのローヒール。


まずは、この靴を変えることから始めよう。


彼に見合う女になりたい。


玄関に舞い戻って紙袋を床に置くと、靴箱を開けた。


その奥に眠っていた7センチヒールの靴。


飾りは靴の正面とヒールの後ろにリボンがついてるだけ。


シンプルな靴でも、今のわたしにはすっごくきらきら輝いてみえる。


それを取り出して、履きかえた。


色はさっきまで履いていた靴と同じ黒だけど、高さが変われば心も変わる。


今度の休みはスカートを買おう。


そう胸に誓うと、まだ薄暗い外へと出た。

< 59 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop