Happy garden.【短編】
もっと彼にふさわしい女に――あの彼女に負けないくらい――にならなければ。
誠司さんの傍にいることが心地よく、また、彼も傍によることを許してくれたから、
そんな風に近づけるにはわたしだけだと勘違いしてしまっていた。
『彼はありのままのわたしを受け入れてくれる。
だから、きれいになる努力なんてしなくても大丈夫』
そんなことを思っていたのかもしれない。
よくよく考えてみれば、彼とわたしの関係なんて、毎日のお弁当だけ。
その受け渡しで、1、2分会うだけ。
そんな関係も、今、切れてしまう。
――ごめんなさい。もうお弁当は作れません。
たった2文。
そのメールを打つのに10分はかかり、送るのに5分は迷い、送り終わったあとは妙にすっきりした。
いつか女として自信をもてたら、またメールを送ろう。
そう胸に決意を沈め、今年最後になるかもしれない桜の花をじっくりと眺め、ようやく腰を上げた。