Happy garden.【短編】
その後は思った以上に簡単だった。
彼からのメールは胸が痛むので見ないようにして、電話はもちろん取らず。
朝は何本か早い電車に乗るようにして、定時で会社を出る。
誠司さんの仕事は相変わらず忙しいのか、電車ではち合わせすることはない。
2日前に1度だけ、帰りにショッピングをしていていつもより遅くなったけど、その時も会わなかった。
ショッピングの戦利品――黒のシンプルなスカート、紺色のストライプスカート、裾に小花模様のついた茶色のスカートの3着で、どれも膝丈だ――は日替わりで履くようにしている。
メールを送った日から数日は夜に誠司さんが訪ねてきて、しつこくチャイムを鳴らされたけど、それも無視した。
彼のことは好きなのに、彼の一番になれないからといって拒否してしまっている自分になんだか笑えた。
バカなことをしてる。
そんなことはわかっている。
だけど、もっと自信がつくまでは。
あの彼女から奪えると思えるくらいにならなくては、と変にこだわってしまうんだ。
そうこうして、メールを送ってから5日が過ぎ、初めての週末を迎えようとしていた。