Happy garden.【短編】

ごみ箱の側にあるベンチにすとんと腰をおとした。


桜を見上げる。


感情の蓋が閉まらない。


じわりと涙がにじむ。


それを堪えながら携帯のカメラで撮った写真は、ピントが合っているのかわからなかった。


黒の中にぼんやりと暗い白が浮かんでいる。


それをメールに添付した。


――桜、きれいです。


たった一言のメールなのに、誠司さん宛てというだけで、5分も迷った。


勇気を出して送信ボタンを押した。


自分に自信がつくまで、彼と会うことは辛いけど、メールだけでも迷惑がられずに続けられたらいい。


そして、いつかあのきれいな女性よりもわたしを見てくれたら――……。


そんなことを考えながら、ぼうっと桜を見ていた。





さっきの5分よりもずっと長く、ぼうっと桜を見上げていて、不意に気づいた。


急いで帰らないと、買った鮭がいたんでしまう。

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