Happy garden.【短編】
すると、誠司さんは眉間にしわを寄せて、不機嫌そうな表情になった。
「それは俺のセリフやろ」
だよねぇ、と思い苦笑いしてしまう。
「……俺、何かした?」
ころころと変わる彼の表情は、今度は両眉を下げ、まるで捨てられた子犬のようなものになった。
その姿を見ると、胸を掴まれたような気持ちになった。
誠司さんは何も悪くない。
悪いのは、悪いのは――……。
わたしは何も言えなくて、ただ首を横に振った。
わたしと誠司さんは付き合っているわけじゃないんだから、彼が誰といたって、他の女性と何をしたって文句を言う資格なんてない。
そうわかっているつもりでも、悲しくて、どうしたらいいのかわからない。
「何かあったから、この頃ずっと俺を無視してたんやろ? 俺は知る権利がある。教えてや」
わたしはもう一度首を振る。
「何もないの。だけど、ごめんなさい」
言葉を区切って、息を大きく吸った。
「もうお弁当は作れない」