Happy garden.【短編】
あんなに頑張ったんだから、食べてもらったほうが救われるのかもしれない。
いくら嫌な目にあったからといって、ごみ箱行きはこのおせちもかわいそうだよね。
「……いいよ。あげる」
そう言って、包みを差し出す。
でも、男は受け取らずに、辺りを見回した。
伸ばした腕をどうしたらいいのかわからなくて、戸惑った。
「あの、だから、これ……」
男は顔をわたしの前に戻すと、ポケットの両手を突っ込んで訊いた。
「ここやと寒いし、どうする」
「ここやとって?」
どうする、と訊かれても、彼が何を尋ねてるのかわからなかった。
ここだと寒いってことは、食べる場所を探してる?
「どうせこのおせちはいらないから、全部食べてくれていいよ」
食べてもらいたかった人には受け取ってもらえなかった。
それどころか、おせちを作る女なんか重いって、そんな家庭的な女なんて求めてないって言われたんだ。