Happy garden.【短編】

あんなに頑張ったんだから、食べてもらったほうが救われるのかもしれない。


いくら嫌な目にあったからといって、ごみ箱行きはこのおせちもかわいそうだよね。



「……いいよ。あげる」



そう言って、包みを差し出す。


でも、男は受け取らずに、辺りを見回した。


伸ばした腕をどうしたらいいのかわからなくて、戸惑った。



「あの、だから、これ……」


男は顔をわたしの前に戻すと、ポケットの両手を突っ込んで訊いた。


「ここやと寒いし、どうする」


「ここやとって?」


どうする、と訊かれても、彼が何を尋ねてるのかわからなかった。


ここだと寒いってことは、食べる場所を探してる?


「どうせこのおせちはいらないから、全部食べてくれていいよ」



食べてもらいたかった人には受け取ってもらえなかった。


それどころか、おせちを作る女なんか重いって、そんな家庭的な女なんて求めてないって言われたんだ。


< 7 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop