Happy garden.【短編】
覗きこまれて、間近で目が合う。
わたしは驚いて、目を見開き、息を止めた。
肩に力が入る。
誠司さんの指先が熱い。
心はドキドキと脈打つ。
だけど、彼の黒い瞳を見るうちに、不思議と心が落ち着いてきて、息をはいた。
「なんやの、彼女って。そんなんいたら、お弁当作ってもらうわけないやろ」
誠司さんはまじめな顔をして言う。
その言葉の意味をすぐには理解できなくて、頭のなかで繰り返した。
「……もしかして、いないの?」
「ああ」
頷く彼を見て、体の力が抜けた。
「当たり前やん。そこまでデリカシーのない男ちゃうつもりやで。
もちろん、女遊びだってせえへん。好きな女がそばにいてくれたら、それでええ」
誠司さんは仏頂面で言った。
かすかに眉が上がっていて、怒っているようだ。
「あ、あの、初めて会った日に女に困ってないって言ってたから、てっきり……」