Happy garden.【短編】
彼女なのか、遊びの女なのかわからないけど、誰かがいるんだということをあのきれいな女性を見たときに思いだしたんだ。
「それ、フォローになってへんやん」
「あ、ごめんなさい!」
口を開けば開くほど、どつぼにはまる気がして、謝ると口をつぐんだ。
誠司さんははぁっと息をはいて、わたしから手を離すと、スーパーの袋を代わりに持ってくれた。
「あんなん嘘や」
言いながら、わたしに背を向けて歩き出す。
「嘘?」
「ああ、ほんまはエッチなんて彼女おらへんこの一年はしてへん。
正直にそう言うたら、俺がエッチに飢えてるんじゃないかってカスミは不安になるやろ。
俺はよう知らん女抱く気ないけど、会ったばかりのカスミに信じてもらうんも無茶やし。
そやから、女に困ってないように言ったほうがカスミは安心すると思ったんや。それに、気強そうな女に見えたから、怒らすような言い方したほうがついてくるかもってな」
聞きながら、夜に溶け込んでいまいそうな彼の広い背中を眺めていた。
どんな顔で話しているのかはわからない。