Happy garden.【短編】
見なくても、真っ赤になっているのは間違いない。
彼女がいるって誤解して、連絡を絶って彼に心配かけて、そしてすべてをぶちまけて。
はっきり好きって言ったわけじゃないけど、そう叫んだも同じだ。
誠司さんのかたい胸に顔を押しつけて、彼から隠した。
「悪い? 誠司さんみたいにだらしない男を好きになるなんてって思うけど、なっちゃったものは仕方ないでしょ」
彼の服を掴む手は震えているくせに、出てくる言葉はかわいくないもので、自分が情けなくなる。
こんな可愛げのない女、誠司さんは好きじゃないかもしれない。
ああ、ちょっとしたことでも気になってしまうくらい、彼が好き。
どこがどうとか、いつからとか、よくわからない。
家庭の味に飢えてる誠司さんに母性本能が刺激されて。
さりげなく優しく、あたたかい誠司さんのそばにいたいって思った。
こんな人が家族になってくれたらって。
それがきっかけ。
「悪くないよ」
彼の力がこもり、聞こえた声に胸が熱くなった。
「俺も会ったときからカスミに惹かれてた。なんか寂しそうで、ずっとそばにいたいって思ったんや。俺の彼女になってくれるか」
わたしは彼の大きな背中にそっと腕を回し、彼の中でうなずいた。
END.