切望と絶望の扉
第三章 刑場と絶命
俺は刑場にいた。
そこは八畳くらいの広さで一脚の椅子と花束や菓子が並べられた祭壇があり、白いカーテンでもう一つの部屋に仕切られていた。
あそこが俺の死に場所か。
なぜか直立していた俺は即座に椅子に座らされた。
祭壇付近に供えられた菓子を食べてもいいらしいが、この状況で食べれる者はいないだろう。
教誨師が来た。ここにきてわかったことがあった。どうやら祭壇は回転式で仏教、神道、キリスト教ほか自分の信仰する宗教を選べるらしい。
ふざけているな…。
今の俺に宗教というのは理解できはしなかった。神仏を信用する…そんなものなんかどうでもいいことだ。それで救われるなら、今の俺は存在などしないだろう。
この俺の記憶には神だとか宗教だとか家族や仲間なんかない。そう、俺は無知と悲しみと怒りで終わる…もう、なにもないんだ。俺という人間は悲観という概念そのものである。
今の俺は自己を定義付けることによって何か安心を得ているのかもしれない。