切望と絶望の扉
第五章 逃亡と理解

…ホテル…



 トゥルルルンルンッ…。

 ハッと驚いたおれは…すぐにその音源を探した。

 ベッド横の内線だ。おれはゴクンと唾を呑み、ゆっくりした手つきで受話器を取った。

「お客様、別室の方がご用意できたと先程申し上げたのですが、まだ移動なされていないですよね。荷物、貴重品を忘れず、御移動の方お願いします。」

   …ホテルマン…!?

 いったいどういうことだ…目覚める前のおれのせいか…。

「どういった理由で?」

 推察不可能なこの状況で、おれは素直に質問するしかなかった。

「二時間ほど前に入室されて、空調が不良とのことでこちらにご連絡頂き、すぐ別室にご移動の件をこちらからお客様にご連絡したのですが。今から30分後に空調業者の点検、修理が入ることも存じた通りでございます。」


 …30分後…なんだと…それはまずい…。


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