切望と絶望の扉

 カツカツという歩く音が俺の方に近づくと共に、

「おい!うるさいぞ!」

 黒の帽子と制服を着用した男が怒鳴っていた。黒い身なりの男が向かいの男の牢に近づき言った。

「またお前か。消灯時間後は一切の私語は禁止と言ったはずだ。そんなに独房に入れられたいのか。」

 こいつが?

 看守らしき人物は向かいの牢の男の前に立ち、強く立ち振る舞っていた。向かいの牢の男は青ざめた表情でへこへこ頭を下げていた。主従関係?違うな。これではまるで…。

 そして、もう1つの事実に俺は気付く。この電灯のお陰で、俺の視覚から得る情報がゼロから相当量に増えたため、だいたいの状況把握ができた。
 
 看守、向かいの男の反応、先程の規律、現状からここは日本の刑務所であると判断した。そして俺はどうやら…牢にブチ込まれた犯罪者だと思われる。

 しかし、目覚める前の俺がいったいなにを?24時間切ったとはなんのことだ…。サッと看守が振り向き俺をじろりと見る。

「戸田将平、出ろ。」

 今なにを?

 何だ?トダショウヘイと言ったのか?
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