切望と絶望の扉
どこかで見たことがあった。自分自身だから当然か…と考えるが実に不思議というか疑心ばかりであった。自分という記憶がまったくない分、この状況はけたたましいものである。そして、初めて見た自身の顔は憎たらしいものであったのだ。それは好みなどタイプ的なものではなく、許せない…というような感情などが入り混じっているようだった。看守たちの歩きに合わせながら考え込んでいると、
「まさか消灯時間後になってしまうとはな。ふふ…お前らしいな。さあ、着いたぞ。」
先頭にいた看守がなにやらぶつぶつと喋りながら、ある部屋のドアの前で足を止めると俺の後ろに付いていた看守らも立ち止まり、俺をある部屋に招き入れた。看守がドアを開けると部屋内の様子がこの先を露にした。
こ…これは。
俺は直感した。これはあまりに残酷な光景であると。一目散だったのだ。そう…しばらく、瞬きをするのも忘れるほどに、俺に対して酷かった。