切望と絶望の扉
…残酷な牢獄…
俺にはここで目覚める以前の記憶がない。自分が何故ここにいるのか?まるで俺ではない誰かが、俺を陥れるよう犯罪をやらせたような気がする。現状での俺の気持ちでは目覚める前の俺は…今の俺ではない。確実に別人だと思っている。
それでいいのか?
極度の記憶喪失になった者たちは誰もがそう思うのか。きっとそうではないのだろうか?俺には全く罪などはないと解釈してもいいのだろうか。
「時間だ。出るんだ。」
気が付けば、牢の目の前に看守がいた。もう時間がきたのか。思ったよりも早い気がした。看守は俺を憐れむような顔をしていて、他にもなにか言いたそうな顔にも見えた。
たぶんあの部屋での晩餐時に、看守はなにも食べなかった俺を見て自分の罪の重さを実感したのだろう…とでも思っているに違いない。
違う!
憐れむところがあまりに違い過ぎるのだ。この罪は俺自身のものではない。
俺は面前の看守に対し、やりようのない怒りを感じた。どう説明すればいいのだろうか。むしゃくしゃするということではないが、八つ当りとでも言えば適切なのだろうか…。