だから、とぶ
風が気持ちいい。
右足に力を入れる。
左足に力を入れる。
右足に力を入れる。
左足に力を入れる。
ただ、繰り返す。
どんどん、どんどん、自転車は高度を上げる。
私だけが見える景色。
私だけが味わえる気持ち。
不気味な魅力に取り付かれている。
滲む世界の中をただ、ただ、ひた走る。
目的地もなく。
私にしか分からない不幸。
辛いんだよ。
そう叫びながらペダルを踏む。
高揚する気分は否めない。