だから、とぶ

「何?」



自転車を止めずに受話器を耳に当てて、多少冷たく聞こえるような声を出す私。

会話はいつだって、短文だ。



「西の空に雲がない。」

「だから?」



「明日は晴れだ。」



嬉しそうに微笑む声。



「しかも、今日の夕飯はエビフライだ。」



自慢気に話す。

それが自慢になるかって心の中で毒づきながら、私の自転車は地面に着地した。



キキーッ

そして、思いっ切り自転車を止めて、クルッと元来た道に向けて反転させた。

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