だから、とぶ
「おまえの夕飯は?」
「知らない。」
そうして、私は自転車をこぐ。
右足、左足、右足、順番にペダルを踏みながら。
「…あんま、無理すんなよ。」
電話が切れる直前、残された言葉。
私が空を飛ぶことを知っている。
1人自転車で飛んでいたことを知っている。
機械を通して得体の知れない何かが伝わる。
そいつは耳から入って、胸の辺りをきゅっと掴む。
私は世界一不幸な少女だから、そんなもの本当はほしくない。