ほしいのはあなただけ
後ろを急いで振り返ると、清くんがジッと私を見つめている。
『…え?清くん、今なんて?』
私が聞き直すと、
「良かったねって」
と、無表情で言った。
『清くん…、それ…どぉゆう意味で…っ』
「そのまんまじゃんッ」
即で答える。
そして私の目をジッと見つめる。
清くんの瞳に吸い込まれそう……。
「…違う?」
追い込むかのような言葉。
『ちっ!違うに決まってるじゃんかぁ!』
顔を清くんから背けてそう言い放った。
「ふぅん。…ま、俺に話せることがあったら何でも話してよッ」
『…へっ?』
再度、清くんを見た。
「相談なら乗るし」
そう言い残し、清くんは下駄箱の中へ入っていった。
『…なっ。…な…っ!』
言葉も出ない。
ただ目線はジッと清くんを見ている。
* * *
ガラッ
朝のHRの時間。
みんな黒板に書いてある席順の指示通り着席している。
「おはよぉございますッ!」
教卓に立つ浩サン(名倉浩次センセー)。
「おッ!今年の担任は浩サンかぁ!ラッキーだなぁ」
前の席の望が喋りかける。
『うんっ、だねぇ!』
確かに、浩サンは30代後半のオッサンだけど、生徒からの信頼も厚い。
「みんなの期待通り、俺が3Cの担任だッ!よろしくな」