天使のララバイ


「うーん、どうしよっかなっ」

アキは陽気に答えてみせる。


その笑顔があまりにも楽しそうで、癇にさわる。



「帰って」

強くそう言って睨むとアキから笑顔が消えた。


「うー、怖いよ美憂ちん」
「だからその呼び方もやめて」


いちいちなんなんだ。


本当、いつまでたってもペースはアキにあって、いくらあたしが試みても引導を渡してはくれないみたいだ。



「はぁ…」


「そんなため息つかないで。
幸せ逃げちゃうよ」


つかせてんのは誰だっつーの。


心の中で呟いて、またため息をついた。



「やっぱり帰らないね僕」

アキはまた下を眺めて言った。


「は、なんでよ!」



「いつ美憂に危険が訪れるかわからないからね、うん。
大丈夫、なんとかなるよ」
アキはそう言ってまた笑顔を浮かべた。


なんとかなるならないの問題じゃなくてあたしが言ってるのは一緒だと邪魔、って意味なんだけど。


ただ、もう何を言っても聞かないと思い、あたしはもう一度ため息をついて屋上の壁に背中を預けた。




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