天使のララバイ
不敵に笑う彼女の顔は、憎らしくて仕方がない。
本当なら今、ここで殺してやりたいくらい。
「何、しに来たのよ。
ここに、あんたのものはない」
ひとつだって置いておきたくない。
「ないわ。
でも、欲しいものはあるの」
彼女はあたしの言葉も無視して靴を脱ぎ、
廊下に足を踏み入れる。
「…警察、呼びますよ」
「勝手に呼べば?
もっとも、捕まる可能性はゼロだけど。
夫の家に来ただけだもの」
彼女はそう言ってあたしの横を通りすぎ、リビングへと向かっていく。