天使のララバイ
あたしがぼーっとそこを眺めていると
「あなたにどうこう言われる筋合いはないです。
っていうか、とりあえずお引き取りいただけません?
フホーシンニュウですよ」
とアキは冷ややかに笑って手を振った。
「な…、
あなたには関係ないわ」
「ないからいってるんじゃないすか」
あたしは、ふたりのやり取りにまざろうとはせず、そこを眺めているだけ。
彼女に言い返すことも出来ない弱い自分。
何も出来ない、無力な自分。
救いようがない。
所詮、甘ったれた高校生ひとりでなんて生きていけるわけなかった。
頭の隅でそんなことをぼんやり考えた。
「いいから、ちょっとあんたどいて!」
しばらくの討論の後、しびれを切らした彼女がアキを突き飛ばしてリビングへと足を踏み入れようとする。
「いやっ!」
その瞬間、長い間固まったように動かなかった足が、急に軽くなって、
気が付けば走り出していた。