それでも私は恋してる



やがて車は静かに出発した。

お互いに何を話せばいいかわからずなかなか話を切り出すこともできなかった。



途中、赤信号のため車が止まる。



ふと手に何かが触れた。



?!



そうそれは先生の手だった。

最初は私の手を撫でるだけだったけど

やがて指を絡めてくる。

そして指だけでなく全体へと変わり

ぎゅっと手を握る形になった。



会話がない分余計にドキドキしてしまう。

私は先生にこのドキドキが伝わってしまうんじゃないかと思った。



信号が青に変わる。

先生の手は繋がれたままで

私はドキドキが止まらなかった。



そのまま車は私たちのマンションに着いた。

もちろん車から降りるわけだから自然と手は離れる。

何も言わないけど少し悲しくなった。



「ほら行くぞ」



そう言って先生は手を差し出してきた。


「うん」



私は差し出された手を握り

にっこり微笑んだ。



やっぱり好きな人の手を握ることができるのは嬉しい。

離れるたびに悲しさを味わうけど

握った時の幸せがあるから

きっと我慢できるんだ。





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