マワルとソラ
廻は、席の位置のせいもあり彼の顔を見たことがない。

先生の質問に答えたことがあるからかろうじて声は聞いたことがある。

クラスの他の男子の顔はわかる。けれど名前はわからない。廻は名前を覚えるのが決定的に苦手だった。

しかし宙に関しては、他の男子とはまるで逆のパターンであり、それが廻にとっては新鮮で廻を宙の観察に駆り立てた。

「マワル何ボーっとしてるの?先生もう来てるよ。」

ケイコの声で我に返ると先生はもう教壇の上で黒板に文字を書いていた。

―カカカカッカッカ、カカカッ―

チョークが黒板に当たる音が妙にリズミカルで、何だか廻は眠くなった。

ケイコもユミも「チョークの音を聞くと眠くなる」と言っても笑いながら「意味がわからない」と言っていた。

これは廻の理屈。

私には私の理屈がある。そんなことを考えながら、机につっぷして眠ってしまった。
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