オレンジ色に染まる

“好きだったから。”


……何それ。


谷野に目をやる。と突然に、電車はがたんと一瞬揺れて、それからゆっくり停車した。

ドアが開く。

あいつが立ち上がったのを見て、ようやくあたしは我に返って、慌てて電車を降りるとあいつを追いかけた。


「谷野っ」

あたしの呼び掛けにも、あいつは振り返らない。

何よ。何だってのさ。

だいたいどうして過去形!?


「谷野!」

もと陸上部のあたしをナメるんじゃないよ!

改札を抜けそうなあいつを、走って追っかけて、ぎゅっと肩を掴んだ。


「……森島」

ちょっと、何でそんなに逃げようとするのよ。


「つか、何故に過去形?」

とりあえず、気になってたコトを訊いてみた。

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